『国家資格に挑戦してみて見えてきたこと』船橋近隣市32歳男性利用者さんの声

イ:まずは自己紹介と現在の状況からお願いします。

声:船橋近隣市に住んでいます。3月に社会福祉士※1資格取得のための通信制大学卒業見込みです。2020年の8月までは学童保育のアルバイトをしていたのですが、社会福祉士国家試験準備の為にいったん辞めて、通信制大学卒業の為の実習や卒業のためのレポート作成を経て、本格的に試験勉強を始めたのは12月からでした。2021年2月に試験を受けて、今は結果待ちの状況です。

イ:それはドキドキの状況ですね。そんな大切な時期にインタビューに応じていただきありがとうございます。合格の手ごたえはどうでしょう?

声:手ごたえは……何とも言えません。可能性はあるけど厳しい?という状況です。

イ:社会福祉士は合格率が3割未満の難関国家資格ですからね。また後程、その資格を目指そうとしたきっかけを伺うとして、まずはふなばしサポステに来るまでの経緯を教えてもらっていいですか?

声:理系の大学に在籍していた時に東日本大震災があり、それがきっかけで理系出身者が就職する民間企業よりも、公務員や人の役に立てる地域に身近な存在になりたいと思うようになりました。当時は警察官への就職を考えていて、大学卒業後は警備員のアルバイトや警察関連のボランティアをやりました。ただ、あるボランティアで実際に警備に就く警察官のガタイの良さを目の当たりにして自信がぐらつきました。ちょうどその頃、家族の事情で祖母の介護を数年間一人で担うことになりました。しかし、そういった時間を過ごすうちに就職するのが怖くなってしまい、介護期間が終った後もひきこもりがちの生活になってしまったのです。当時、大学時代に仲の良かった友人が心配してメールで何度も連絡をくれたりしたのですが、後ろめたさで返信できませんでした。そういった状況への罪悪感もあって家事は積極的に手伝っていたのですが、就職する自信がどんどん無くなってきました。でも、30歳までになにか動き出さなきゃまずいな、という不安感はあって、そんな時にちょうど地元市役所が会場で某サポステの出張相談会があったのです。でも、市役所は背広を着てちゃんと仕事している人達が多くて、それがプレッシャーで、市役所の前までは行ったのですが、結局は参加できなかったのです。

イ:そのような心の葛藤を教えていただけるのはふなサポを運営する上で本当に参考になります。

声:でも、それがきっかけでサポステの存在を知りました。自分の実家から通えそうなサポステをwebサイト等で色々と調べていく中で、ふなサポが明るい雰囲気だったので、まずは連絡してみようと思ったのです。でも、当時のふなサポのwebサイトは利用する手順がとても分かりづらかったです(笑)それに、『ふなばし』と付いているけど船橋市外の人が利用していいのか?『若者』と付いているけど30歳近い人が利用してもいいのか等、利用するのに不安点がたくさんありました。でも、どうすればいいのか分からないまま、まずは電話してしまえ!と思い切って掛けました。実際の来所は何日か後かな、と思っていたのですが、次の日に来ますか?と言われてしまい、戸惑ったものの、そのままの勢いで行くことになりました。初来所の時は既に30歳になっていました。

イ:確かに、その頃のふなばしサポステのwebサイトは、雰囲気はともかく、分かりづらかったかもしれません……。今のサイトは利用者さんと話し合いながら令和2年にリニューアルしました。実はこの『ふなサポさいしょの一歩』は、まさに利用者さんと利用を躊躇している方との接点があった方が良いのではという声さんのアイデアが元になっていたりするのです。初来所時の事をもう少し詳しく教えてください。

声:連絡して次の日に行くことになったので髪もボサボサで着ていく服もない!それに、地図をプリントアウトしていったのですが、ビルはこのビルでいいのかな?という不安※2がありました。でも、市役所よりも入りやすい雰囲気なのは助かりました。来所すると、まずはカウンセラーからのインテーク面談がありました。すごく優しく受容してくださり、自分が持っていた罪悪感も取れていきました。その後、自分の担当となるキャリアコンサルタントを紹介され、以後、その方に色々な相談をしながら進路を決めていきました。

イ:それでは、ふなばしサポステで役に立ったり印象に残っている支援プログラムや関わりはなんでしたか?

声:担当キャリコンさんとの定期的な面談は勿論ですが、特に印象に残っているのは、ふなサポ職業体験として行った高齢者施設でのギョウザ販売ボランティア活動※3ですね。ひとつの目標を参加者みんなで協力しながら段階的に成し遂げていく過程はとても為になりました。それと、OB・OG会※4での交流も良かったです。というか、今思うと全てのセミナーが良かったと思います。セミナーに参加すると利用者さんの誰かがいますし、セミナーによってはグループワークもあります。その中で、例えば好き嫌いや性格など自身の特徴や価値観を見つめ直して、それを人と話していくことでそういう自分でもいいんだと肯定できるようになっていきました。ひきこもっていた時は周りを遮断していたのですが、ふなサポを利用するようになって他の利用者さん達と雑談する機会もあり、自分の趣味などだけでなく、今の仕事が出来ていない状況を言ってもいいと思えるようになり、自然と周りの話も聴けるようになりました。そういう意味で、ふなサポは私には自信を取り戻していけた場でもありました。今はもうないですが、以前のふなサポは15時くらいから施設周辺の屋外ゴミ拾い作業をやっていましたよね。あの時間は利用者さん同士で色々と話し合える貴重な機会でした。

イ:ゴミ拾いやギョウザ販売等、利用者さん達が参加できる課外イベントは新型コロナウイルスの影響もあって今は中止になっています。落ち着いたらまた実施したいですね。さて、そのような形でセミナー参加等を続けていく中で、学童保育のアルバイトを始めたキッカケはなんですか?

声:2018年4月に初めてふなばしサポステに行ってから、セミナー参加と並行して週1回のペースで担当者とお仕事に関する面談をおこなっていました。先ほど述べたように、人の役に立ちたいという想いがずっとある中で、面談を通じて祖母の介護がキッカケで福祉業界に興味を持っている自分に気付きました。福祉関係の資格を調べていく中で、社会福祉士がいいなと思い、社会福祉士養成の為の通信制大学に入学する準備を始めました。ちょうどその頃、ふなばしサポステが連携している民間学童保育※5の職場体験※6参加者を募っていて、取得を考えていた社会福祉士の領域とも関係があるため、体験参加を決めました。そこの学童保育を利用している子どもはとても多く、それだけ『社会から求められている』というやりがいを感じました。名前を覚えるのは大変でしたが、頑張って数日で全ての子どもの名前を覚えました。

イ:その職場体験は私が担当だったので当時の事はよく覚えています。体験先に様子を伺いに行った際、子ども達ととても仲良く話されている声さんの姿が印象的でした。体験後、その学童保育でアルバイトを始めましたよね。

声:はい。その学童保育は民間ということもあり、かなり意欲的に活動していました。その中で、理科実験やプログラミングなどの様々な学びの教室も提供していたのですが、ちょうど私が理系の大学を卒業していたこともあって職場体験後、習い事の助手も兼ねて働いてみないかとオファーを受けました。自身の勉強との兼ね合いから、通常の学童保育の仕事の他に習い事の講師補助役も一日に2時間含める形で、一日4.5時間・週3日の勤務にさせてもらいました。経験を積んだ後は、徐々に習い事を一つずつ講師として任せてもらえるようになりました。児童対応についても、ある程度自分の判断で自由にやらせてもらえた一方で、難しさを感じた際には上司に気軽に相談できたり、同僚からのサポートもあったので、やりがいを感じながら安心して続けられました。ただ、アルバイト先の学童が千葉にも事業所を立ち上げ、そこに関わるようになってから忙しくなりました。ちょうどコロナウィルスの蔓延で学級閉鎖となった時期が重なり、一時期は週5日夏休み時のような形態で働くことになったのです。組織としては万が一教室で感染者が出た際のリスクマネジメントとして出勤する職員を最小限にする必要がありました。そのため、新しく立ち上がったばかりの千葉教室での出勤は増え、それと同時に中心的な役割も担わせて頂きました。またコロナ禍でも医療現場など休めない職場で働く親御さん達をサポートしたい想いから、やむを得ないと判断しました。その後、小学校も再開し少し落ち着いてきた頃に、そろそろ大学卒業の為のレポート作成や実習、国家試験に専念しなければ、という事で退職しました。辞める際には、スタッフだけでなく、教室を利用していた子から手紙を貰ったり、保護者から千葉教室で行っていた習い事がなくなることを惜しむ内容を連絡帳に記載して頂けたりと、辞めるのを思いとどまるように促す内容のものもありました。とても嬉しかったですね。

イ:そういった経験をした上で、晴れて社会福祉士資格を取得出来たら、より一層福祉系のお仕事をしていくモチベーションになりますね!

声:それが…そうでもないのです。やりがいは感じた一方で、大学での勉強や実習、そして学童のアルバイトをやっていくうちに、福祉系のお仕事をする自信がなくなっていったのです。福祉系の対人援助のお仕事は明確な答えがある訳ではなく、それが理系出身の自分にとっては、とても難しく感じてしまいました。それに、文章を読んだり書いたり、支援計画の作成をしたりという作業も不得意だなと思いました。逆に、パソコンのような機械類や手先を使う事などは得意としているなと実感しました。そういう想いもあって、社会福祉士の合格結果を待っている状況ではありますが、今は機械系の業種に行こうかな、あるいは学童保育での講師経験をきっかけにパソコン教室の講師アルバイトもいいのかなと揺れている状態です。ただ、福祉系への道も頭の片隅には残っています。現在は仕事をしていないですし、どの道に行こうか迷っているという面では3年前にふなサポに初来所した時と状況は一緒なのかもしれません。ただ、この3年間は無駄じゃなかったですし、内面的にも大きな変化がありました。一方で、『人の役に立ちたい』という想いは今も持っています。

イ:実際に経験しなければ分からないことが殆どですよね。その中で、やってみて敢えて別の道を選択するというのも、とても意義深い経験だと思います。それでは最後に、まだふなサポへの『さいしょの一歩』を踏み出せていない方に対してメッセージをお願いします。

声:自信が持てない状態っていけないことじゃないと思います。実際、初来所時の自分がまさに自信がない状態でした。今も色々な事に迷いはありますが、でも今は『自信が持てない自分』でもいいじゃんって思えます。自信が持てないという経験があるのは自分にとっての強みじゃないかと思っているくらいです。ふなサポは、私には就職活動の場であったと同時に、人と話したりして自信を取り戻せていけた場でもありました。いきなり高いステップでなくても大丈夫だよ、少し雑談しに来てみませんかということですね。

(令和3年3月インタビュー実施)

補足:その後、声さんは社会福祉士国家試験に合格しました!



【注釈】

※1:社会福祉士。医療・福祉・教育・行政機関等にて日常生活を営むのに問題がある人からの相談に対して助言や指導、援助を行なう専門職であり、その名称を名乗るためには国家資格に合格する必要がある。

※2:このビルでいいのかな?という不安。ふなサポは『Y.M.A.Officeビル』の5階に入居しているが、ビルの入口付近の壁には旧建物名の『千代田生命船橋ビル』が刻まれている。初来所時は注意が必要!

※3:ボランティア活動。ふなサポでは職場体験の一環として各種ボランティア活動を実施。インタビュー内の高齢者施設ギョウザ販売は、準備段階から調理まで、利用者さんメインで実施している。

※4:OB・OG会。ふなサポを経て就職した方や現役利用者が集まって情報交換をするセミナー。現在は『情報交換会』と名前を変えて土曜日に不定期で実施。

※5:民間学童保育。主に日中保護者が家庭にいない小学生児童に対して、授業の終了後に適切な遊びや生活の場を提供する保育サービス。自治体ごとに名称が異なり、『放課後児童クラブ』『学童クラブ』『放課後ルーム』等とも呼ばれる。また各自治体が設置する『公設学童』と、民間団体が設置する『民設(民間)学童』があり、一般的に利用料は民間学童の方が、利用料が高い分、各種サービスが充実している。

※6:職場体験。職場体験。連携企業の職場で実際に「はたらく」を体験。期間は1週間~3ヶ月、仕事内容は企業によって様々。詳細はふなサポwebサイト内の下記URL参照。
https://funasapo.jpn.org/shokuba